デンタルフロス(糸ようじ)の驚くべき効果と正しい使い方
監修:歯科医師 金丸智士
毎日歯磨きしていても、お口の中に汚れが残っているかもしれないことをご存じでしょうか。実は、歯ブラシだけでは全体の約6割しかプラーク(歯垢)を落とせないというデータがあります。
そこで重要になるのが「デンタルフロス(糸ようじ)」です。
このコラムでは、デンタルフロスを使うメリットや効果的な使い方、選び方を公的機関のデータを交えてわかりやすく解説します。
1.なぜ必要?デンタルフロスがもたらす4つの効果
1-1 歯垢除去率が約1.5倍にアップする
1-2 虫歯や歯周病の発症リスクを大幅に下げる
1-3 口臭の発生を原因から抑える
1-4 詰め物の不具合や虫歯の早期発見に繋がる
2.初心者向け!デンタルフロスの正しい選び方と種類
2-1 初めてでも扱いやすい「ホルダータイプ(F字・Y字)」
2-2 コストパフォーマンスに優れた「ロールタイプ(糸のみ)」
3.効果を最大限に引き出す正しい使い方と手順
3-1 歯茎を傷つけないための優しい動かし方
4.デンタルフロスに関するよくある疑問と回答
4-1 使う頻度は?毎日やるべき?
4-2 使うタイミングは歯磨きの前?後?
4-3 使うと血が出るのはなぜ?
5.毎日のデンタルフロスで健康な歯を維持しよう
なぜ必要?デンタルフロスがもたらす4つの効果
まずは、デンタルフロスを毎日のケアにプラスすることで得られる4つの効果についてご紹介します。
歯垢除去率が約1.5倍にアップする
入念に歯磨きしていても、歯と歯の間の隙間は狭く、どうしても歯ブラシの毛先が届きません。
歯ブラシのみで歯磨きをした場合、歯と歯の間のプラーク除去率は約58%にとどまるとされています。
しかし、歯ブラシに加えてデンタルフロスを併用することで、その除去率は約86%まで向上するという研究結果が、厚生労働省の生活習慣病予防「e-ヘルスネット」などで紹介されています。
磨き残しを劇的に減らすためには、デンタルフロスの使用が不可欠です。
虫歯や歯周病の発症リスクを大幅に下げる
虫歯や歯周病の原因は、歯の隙間に蓄積したプラークの中に潜む細菌です。特に歯周病は、歯と歯茎の境目(歯周ポケット)から進行していきます。
デンタルフロスを使用すれば、歯ブラシでは届かない隙間の細菌を物理的に掻き出すことができ、虫歯や歯周病の発症リスクの低減に繋がります。
口臭の発生を原因から抑える
歯の隙間に挟まった食べカスやプラークは、時間の経過とともに腐敗し、ガスを発生させます。このガスの独特な臭いによって、口臭が強まります。
歯磨き後にデンタルフロスを通してみて、もし嫌な臭いがしたら、それはすでに細菌が繁殖している証拠です。
デンタルフロスで隙間をきれいに保つことは、手軽で効果的な口臭ケアと言えます。
詰め物の不具合や虫歯の早期発見に繋がる
デンタルフロスを通してみて
・いつも同じ場所で糸が引っかかる
・糸が切れてしまう
・ザラザラした感触がある
などのことが気になる場合は、その部分の歯が虫歯になって欠けているか、過去に入れた銀歯や詰め物が劣化して隙間(段差)ができているかもしれません。
歯と歯の間は視認性が低く、トラブルの発見が遅れやすいため、毎日のケアのちょっとした違和感がサインとなります。
初心者向け!デンタルフロスの正しい選び方と種類
ドラッグストアのオーラルケアコーナーに行くと、たくさんの種類のデンタルフロスが並んでいます。どれを選べばいいのか迷ってしまう方もいらっしゃるでしょう。
自分に合った道具を選ぶためには、デンタルフロスのタイプ別の特徴を知ることが大切です。
初めてでも扱いやすい「ホルダータイプ(F字・Y字)」
プラスチックの持ち手(ホルダー)に糸が取り付けられているタイプです。
・F字型:主に前歯の隙間に通しやすい
・Y字型:奥歯の隙間に通しやすい
ホルダー付きのため、初心者でも鏡を見ながら操作しやすいのがメリットです。 特に、奥歯のケアに慣れていない方は、Y字型からスタートすることをお勧めします。
なお、使用後はよく洗って乾燥させれば、糸が切れたり伸びたりするまで数回繰り返し使えます。
コストパフォーマンスに優れた「ロールタイプ(糸のみ)」
必要な長さに糸を切り取り、指に巻き付けて使用するタイプです。最初は少しコツが必要ですが、慣れると指先で力加減をコントロールしやすく、すべての歯の隙間をスムーズに掃除できます。
ホルダーがついていないためコンパクトで持ち運びが便利なほか、経済的(コスパが良い)である点も大きなメリットです。
さらに、糸にワックスが塗ってある「ワックスタイプ」を選べば、狭い歯の隙間にもスムーズに入りやすくなります。
効果を最大限に引き出す正しい使い方と手順
せっかくデンタルフロスを使用しても、使い方が正しくなければ効果が半減してしまいます。それどころか、誤った使用方法は歯茎を傷つける原因にもなるため、以下の正しい手順をマスターしましょう。
歯茎を傷つけないための優しい動かし方
デンタルフロスを歯の隙間に入れる際には、上からグッと一気に押し込んではいけません。勢い余って歯茎に突き刺さり、出血や傷の原因になります。
1. 糸を歯の咬み合わせの面に当てたら、ノコギリを前後に小さく動かすようにしながら、ゆっくりと横にスライドさせて滑り込ませます。
2. 歯茎の少し手前まで入ったら、歯の側面に糸を沿わせるようにして、上下に数回動かしてプラークを擦り取ります。
3. 隣り合うもう一方の歯の側面にも同じように糸を沿わせて擦ります。
4. 抜く時も、入れた時と同様に、前後にゆっくり動かしながら上へと引き抜きます。
デンタルフロスに関するよくある疑問と回答
これからデンタルフロスを使い始める方が疑問に思いやすいポイントをまとめました。不安を解消して、安心してケアを始めましょう。
使う頻度は?毎日やるべき?
1日に1回、夜の就寝前の歯磨き時に使用しましょう。
人間は寝ている間に唾液の分泌量が減り、お口の中の細菌が最も繁殖しやすい状態になります。そのため、寝る前に1日の汚れを完全にリセットすることが重要です。
毎食後に行うのが理想ですが、ハードルを高くすると続けられないおそれがあるため、まずは「夜寝る前に1回」を徹底しましょう。
使うタイミングは歯磨きの前?後?
諸説ありましたが、近年の米国歯周病学会(AAP)などの論文・見解では「歯磨きの前」に使用することが推奨されています。
先にデンタルフロスで歯と歯の間のプラークを落として隙間を開けておくことで、その後に使う歯磨き粉に含まれる有効成分(フッ素など)が歯の隙間まで行き渡りやすくなるためです。
使うと血が出るのはなぜ?
デンタルフロスを使って血が出ると「傷つけてしまった」「使うのをやめよう」と思うかもしれません。しかし、出血は、その部分が歯周病(歯肉炎)で腫れていることが原因で起きているケースが多いです。
プラークが溜まって炎症を起こしている歯茎は、少しの刺激でも出血します。正しい力加減で毎日デンタルフロスを続けていれば、数日から1週間ほどで汚れが取れ、歯茎が引き締まって出血しなくなっていきます。
そのため、出血がある場合こそ、デンタルフロスを忘れずに使用しましょう。
ただし、何週間も出血が続く場合や強い痛みがある場合は、速やかに歯科医院を受診してください。
毎日のデンタルフロスで健康な歯を維持しよう
歯磨きだけでは落としきれない汚れをしっかり除去してくれるデンタルフロスは、一生自分の歯で美味しく食事をするために欠かせないオーラルケアアイテムです。
最初は手間に感じるかもしれませんが、習慣化すれば、やらないと気持ち悪く感じる方もいらっしゃるほどお口の中の爽快感が変わります。
ぜひ今日からのオーラルケアにデンタルフロスを取り入れて、健康で美しい口元を維持していきましょう。
当院では、歯科衛生士が患者様お一人おひとりの歯並びや好みに合わせたデンタルフロスの選び方、正しい使い方の丁寧な指導を行っています。 「うまく通せない」「自分に合う種類がわからない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。