顎関節症治療のマウスピースの効果とは?種類・使い方・注意点を解説
監修:歯科医師 金丸智士
口を開けると音が鳴る、顎が痛いといった症状に悩んでいませんか?もしかしたらそれは「顎関節症」かもしれません。代表的な治療方法に「マウスピースの使用」がありますが、本当に効果があるのか疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
今回の記事では、顎関節症治療におけるマウスピースの役割や種類、正しい使用方法、注意点まで詳しく解説します。顎関節症と診断され、これからマウスピース治療を始める方の参考になれば幸いです。
【目次】
1.顎関節症におけるマウスピースの役割とは?
2.マウスピースの主な効果
2-1 歯ぎしりや食いしばりの緩和
2-2 咬み合わせの安定化
2-3 過剰な筋肉の緊張を和らげる
2-4 歯そのものの保護
3.顎関節症に使われるマウスピースの種類
4.マウスピースの使用方法と注意点
5.顎の違和感は早めに歯科医院へ
顎関節症におけるマウスピースの役割とは?
顎関節症(がくかんせつしょう)とは、顎の関節や筋肉に痛みや違和感が生じる疾患です。「口が開きにくい」「顎がカクカク音を立てる」「顎に痛みがある」などの症状が現れます。
原因は、ストレスによる歯ぎしりや食いしばり、かみ合わせの不調和、筋肉の緊張、生活習慣など、さまざまです。
マウスピースは、このような顎関節症の症状を和らげるための補助的な治療法として広く用いられています。
ただし、ここで大切なのは、マウスピースは顎関節症を「治す」ものではなく、「症状を緩和」するためのものだという点です。
マウスピースの主な効果
顎関節症の治療でマウスピースが用いられるのは、口腔内や顎のバランスに多角的な良い影響を与えるからです。
ここでは主な4つの効果について詳しく解説します。
歯ぎしりや食いしばりの緩和
顎関節症の大きな原因の一つに、就寝中の「歯ぎしり」や「食いしばり」があります。寝ている間は無意識下のためご自身で力のコントロールができず、顎には体重の数倍もの力がかかっています。
就寝中にマウスピースを装着することで、顎関節や咀嚼筋(咬む時に使用する筋肉)への負担を減らすことができます。
咬み合わせの安定化
もともとの歯の形や並びによって、無意識に「特定の場所だけで咬む」という癖がついている人は少なくありません。
マウスピースを装着して上下の歯が直接触れない状態にすると、これまでの咬み合わせの癖が一時的にリセットされます。
下顎が最もリラックスできる自然な位置に誘導されるため、咬み合わせのバランスが整い、顎の動きがスムーズになる効果が期待できます。
過剰な筋肉の緊張を和らげる
顎関節症に伴う痛みの原因のひとつに、筋肉のコリ(緊張)が挙げられます。肩こりと同様に、顎周りの筋肉が常に緊張していると、血流が悪くなって痛みや違和感を引き起こすのです。
マウスピースには「咬み合わせの高さを適切に調整する」役割もあります。装着することで、筋肉が無理に引き伸ばされたり、縮こまったりするのを防ぎます。筋肉がリラックスした状態を保てるようになるため、重だるい痛みや開口時の違和感の軽減に繋がります。
歯そのものの保護
激しい歯ぎしりが続くと、歯がすり減って平らになったり(咬耗)、目に見えないひびが入ったり、最悪の場合は歯が割れてしまうこともあります。
マウスピースという「身代わり」を挟むことで、ご自身の天然の歯が摩耗・損傷するのを防ぎ、将来的に歯を失うリスクを低減させることができます。
顎関節症に使われるマウスピースの種類
顎関節症の治療に使われるマウスピースには、大きく分けて「スプリント」と「ナイトガード」の2種類があります。それぞれ役割や使用目的が異なるため、歯科医院で適切な診断を受けたうえで、症状に合わせて使い分けることが大切です。
1. スプリント(スプリント療法)
スプリントは、顎関節症の治療に用いる医療用マウスピースです。
顎の位置や筋肉の緊張をコントロールしながら、顎関節症の症状を緩和する目的で使用されます。
<スプリントの特徴>
○咬み合わせのバランスを整え、顎関節への負担を減らす
○筋肉の緊張を緩和し、顎関節周囲の安定化を図る
○顎関節症の中~重度のケースに多く用いられる
スプリントは、歯科医師による精密な診断と調整が必要な装置で、使用中も定期的な診察が推奨されます。
2. ナイトガード
ナイトガードは、主に就寝中、無意識に発生する歯ぎしりや食いしばりによる歯へのダメージを軽減するために使用するマウスピースです。
歯と歯の接触を防ぐことで筋肉や関節への過剰な負荷を和らげたり、歯の摩耗や損傷を防ぐ効果があります。
<ナイトガードの特徴>
○歯ぎしりや食いしばりによる顎関節への衝撃を緩和
○歯の摩耗や破折を防ぐ
○軽度の顎関節症や予防目的にも用いられる
ナイトガードには、ビニール樹脂でできたソフトタイプと、耐久性のある強化プラスチック(硬質レジン)で作成するハードタイプがあります。どちらが適切かは、症状に応じて歯科医師が判断します。
マウスピースの使用方法と注意点
<使用方法>
- 基本的には就寝中に装着します。日中にも無意識の食いしばりが強い方は、歯科医の指示で日中の装着も行うことがあります。
- 毎日の使用が大切です。継続することで効果が現れます。
- 定期的な調整を受けましょう。マウスピースは使い続けるうちに摩耗したり、咬み合わせが変化することがあります。目的とする効果を得るためには、状態の確認が欠かせません。
<使用上の注意点>
○自己判断での使用は避ける
マウスピースは、ドラッグストアや通販サイトなどでも販売されています。しかし、市販品は比較的安価で気軽に手に入れやすいものの、ご自身の歯にぴったりフィットしていません。適合が悪いマウスピースを使い続けると、特定の歯に過剰な力がかかって歯を痛めたり、逆に咬み合わせを悪化させて顎の痛みを増強させたりする恐れがあります。
必ず歯科医院で診断を受け、あなたのお口に合った適切なマウスピースを作成してもらいましょう。
○マウスピースの管理を徹底する
毎日口に入れるものだからこそ、衛生管理が重要です。使用後は必ず流水で洗い、柔らかいブラシで汚れを落としましょう。定期的に専用の洗浄剤を使用することで、細菌の繁殖や臭いを防ぎ、清潔に保てます。
特に注意が必要なのは、温度です。マウスピースは熱に弱いプラスチック製のため、殺菌しようとして熱湯に浸すと、変形して使えなくなります。 洗浄は、必ず水かぬるま湯で行ってください。
○症状の変化に注意する
マウスピースを使用していて、痛みが強くなる、装着中に強い違和感があるなどの変化があれば、すぐに歯科医院へ相談しましょう。
歯ぎしりや食いしばりが強いと、マウスピース自体が摩耗して薄くなったり、破れてしまったりすることもあります。その場合もすみやかに歯科医院を受診しましょう。
顎の違和感は早めに歯科医院へ
マウスピースの使用は、歯ぎしりや食いしばりによる顎関節への負担を減らし、症状を緩和するための有効な治療法です。
ただし、症状に合わせた適切な種類のマウスピースを選び、正しく使うことが重要です。必ず歯科医院で診断を受け、ご自身に合ったマウスピースを使用するようにしましょう。
当院でも、顎関節症に対する診断・治療・マウスピースの作製まで対応しております。少しでも気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。