手術前に歯医者へ行くべき理由とは?手術に伴う口腔ケアの重要性を解説
監修:歯科医師 金丸智士

何らかの理由で手術を受けることが決まったら、歯医者へ行った方がいいことをご存じですか?意外に思われるかもしれませんが、実は、手術と口腔ケアには密接な関わりがあります。
今回は、手術の前後における口腔ケアの重要性と、ケアを怠った場合のリスクについて詳しく解説します。
【目次】
1.手術の時に虫歯があるとどうしていけないのか
1-1細菌感染
1-2歯の破損、誤嚥
2.手術前の歯科検診でやること
3.手術後も口腔ケアが大切
4.日頃の口腔ケアの習慣を身につけよう
手術の時に虫歯があるとどうしていけないのか
手術を控えた方が「主治医から虫歯の治療をするように言われたから…」と来院されることがあります。なぜ、手術前に虫歯治療が必要なのでしょうか?その理由として、以下のようなことが挙げられます。
細菌感染
口腔内には、常に多くの細菌が存在しています。それらの細菌は、虫歯や歯周病を放置することによって増殖し、様々な健康問題を引き起こすことがあります。
影響は、口腔内だけに留まりません。虫歯や歯周病があるまま手術を行うと、細菌が血流に入り込んで全身へと広がり、手術部位やその他の部分に感染することがあります。特に、手術部位の感染は、重大な合併症を引き起こすリスクとなります。
さらに感染が進むと、治癒が遅れて体に大きな負担がかかります。そのため、手術前には歯科医院にて適切な治療を受け、口腔内の状態を整えることが非常に重要なのです。
歯の破損、誤嚥
手術時には、全身麻酔や呼吸などのために気道にチューブを挿入することがあります。ぐらついている歯や虫歯で脆くなっている歯があると、チューブを挿入する時に歯が折れたり脱落したりするリスクが高まります。最悪の場合、脱落した歯が気道に入り込み、誤って飲み込んでしまう危険性もあるのです。さらに、虫歯により欠けて尖った歯があると、チューブの操作中にチューブ自体や患者さんの唇を傷つけてしまい、手術中の事故に繋がりかねません。
手術前の歯科検診でやること
手術前の歯科検診では、虫歯や歯周病がないかを確認します。これは、手術中の感染リスクを低減し、全身麻酔に伴う合併症を避けるためです。
虫歯や歯周病が見つかった場合には、可能な限り手術前に治療を完了させることが大切です。ただし、手術までの期間に限りがある場合は、応急処置で対応することもあります。
また、口腔内の清掃を行って細菌数を減らすことで、さらなる感染リスクを低下させることも大切です。適切な処置を行なえるように、手術を控えていることを必ず歯科医師に伝えるようにしましょう。
加えて、現在服用している薬についても医師に報告してください。一部の薬剤、特に抗凝固薬などは、出血が止まらないなどのリスクを高めることがあるため、事前の情報共有が欠かせません。
手術を行う病院内に歯科が設けられている場合は、そこで検診を受けると連携などがスムーズです。もし病院内に歯科がない場合は、かかりつけの歯科医院を受診しましょう。手術の成功率を高めるだけでなく、手術後の回復にも効果的です。
手術後も口腔ケアが大切
手術後の口腔ケアは、合併症を防ぎ、回復を早めるために非常に重要です。そのため、術後のケアプランは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて主治医と歯科医師とで十分に話し合いながら決定する必要があります。
たとえば、手術直後は免疫力の低下などによって歯茎の痛みや腫れが出ることがあるため、柔らかい歯ブラシを使用して、軽い力で優しく磨くことが大切です。大きな動きで強く磨くと傷つけてしまうおそれがあるため、細かく優しく磨くことを心掛けてください。ただし、手術直後にはブラッシングを控えなければいけない場合もあるため、主治医の指示に従うようにしましょう。
また、食後に口を軽くすすぎ、水でのうがいをこまめに行うことも効果的です。このような簡単な対策でも、術後の不快感を軽減することに繋がります。
日頃の口腔ケアの習慣を身につけよう
手術前だから、特別に口腔ケアを行わなければいけないわけではありません。日頃から口腔ケアの習慣を身につけておくことが大切です。
定期健診を受け、正しい歯磨きの方法を実践することで、何かあった時にも慌てることなく対応することができます。口腔ケアを継続することで、手術の有無にかかわらず、口腔内のトラブルを未然に防ぐことが可能になります。日頃から口腔ケアを心がけ、健康な生活を送りましょう。