舌小帯の“できもの”が口内炎だと思っていませんか?舌に潜んだ病気の可能性
監修:歯科医師 金丸智士
「舌の裏に白いできものが…」
「口内炎かと思って放っておいたけど、なかなか治らない」
舌の裏のスジ「舌小帯」にこのような症状が出ている場合、病気が潜んでいる可能性があります。実は、舌小帯にできる「できもの」には様々な種類があり、放置すると危険なものも存在します。
この記事では、舌小帯にできる代表的な疾患とその見分け方、治療法や受診の目安などについて、詳しく解説します。
【目次】
1.舌の裏のスジ「舌小帯」のできものは要注意!
2.舌小帯にできる「できもの」の代表例と見分け方
2-1 1. 口内炎
2-2 2. 粘液嚢胞(ねんえきのうほう)
2-3 3. 舌癌
2-4 4. 白板症(はくばんしょう)
3.自己判断は危険!以下の症状があれば要注意
4.2週間治らなければ、歯科または口腔外科へ
舌の裏のスジ「舌小帯」のできものは要注意!
舌の裏側にあるスジ「舌小帯」は、舌の動きを支える大切な組織です。ここに「できもの」ができると、話したり物を食べたりという日常の動作に影響を及ぼすことがあります。
舌小帯にできる「できもの」は、放置していると悪化したり、再発を繰り返したりすることがあるため注意が必要です。見た目が口内炎に似ているため軽視されがちですが、自己判断で「口内炎だろう」と済ませずに注意深く観察し、必要に応じて専門医の診断を受けましょう。
舌小帯にできる「できもの」の代表例と見分け方
舌小帯にできる「できもの」は、種類によって原因や治療法が異なります。
1. 口内炎
原因:
○ストレス・栄養不足・免疫力の低下・傷など
特徴:
○赤く、中は白い潰瘍
○触れると痛む
○通常は1~2週間で自然治癒
注意点:
○長引いたりや何度も繰り返したりする場合は他の病気の可能性もある
2. 粘液嚢胞(ねんえきのうほう)
原因:
○唾液腺の管が詰まり、唾液が粘膜内に溜まる
特徴:
○半透明~青紫の水ぶくれのような見た目
○痛みは少ない
○一度つぶれても再発しやすい
治療法:
○基本的には手術による摘出(レーザーや薬剤注入療法もあり)
○放置しても自然に治ることは少ない
3. 舌癌
原因:
○喫煙・飲酒・慢性的な刺激(尖った歯・合わない入れ歯など)
特徴:
○初期は痛みがなく、口内炎と間違えやすい
○硬いしこり・色の変化(白・赤)・盛り上がり
○境界がぼやけていることが多い
○進行度によってはびれ・味覚障害・舌の動かしづらさなどの症状が出ることもある
治療法:
○手術による切除、放射線治療、薬物療法など(ステージによって異なる)
ポイント:
○ 2週間以上治らない場合はすぐに受診してください。
4. 白板症(はくばんしょう)
原因:
○不明(タバコや飲酒などの科学的刺激・入れ歯や詰め物の不適合などの物理的刺激・慢性炎症・栄養不足などが関連していると言われています)
特徴:
○痛みがなく、気づかれにくい
○擦っても取れない白い斑状の粘膜
治療法:
○患部の切除、禁煙、物理的刺激の除去など。
リスク:
○前癌病変(がんになる可能性がある病変)のため、処置を行わない場合は定期的な経過観察が必要です。
自己判断は危険!以下の症状があれば要注意
| チェック項目 | 注意すべき理由 |
| 2週間以上治らない | 舌癌などの疑いがあるため。 |
| 触ると硬いしこりがある | 良性疾患では感じにくく、舌癌初期の特徴であるため。 |
| 色の変化(白・赤・青紫) | 粘液嚢胞や白板症、舌癌の可能性があるため。 |
| 再発を繰り返している | 粘液嚢胞の主な特徴であるため。(自然治癒しづらい) |
| 徐々に大きくなっている | 良性疾患なら通常は小さくなるか消失するため。 |
舌小帯の「できもの」は、ご自身では患部の確認がしにくく、症状を正確に把握することが難しいです。舌の裏側は痛みを感じにくいことも多く、「気づいたら大きくなっていた」というケースも珍しくありません。
また、舌小帯部分は日常的に刺激を受けやすく、一度炎症が起こると治りにくいです。自己判断で塗り薬を使ったりつぶしたりして、かえって悪化させてしまうこともあります。
とりわけ注意しなければいけないのは、良性か悪性かが見た目だけでは判別しづらい点です。舌癌の初期は痛みがほとんどなく、慢性的な口内炎と誤解されやすいため、発見が遅れてしまうことがあります。
早期発見できれば、治療の選択肢も広がり、負担も大きく軽減されます。違和感が続く場合や、治りが遅い場合は早めに専門家へ相談することが大切です。
最近ではレーザー治療などの低侵襲治療も普及しており、比較的短時間で処置が可能です。「小さなできものだから…」と放置せず、気になる段階で受診することで、不安を早期に解消できます。
2週間治らなければ、歯科または口腔外科へ
舌小帯に限らず、口の中のできものは、単なる口内炎のように見えても深刻な疾患が隠れていることがあります。
2週間以上治らない・しこりがある・色が変わっている・再発する、といった場合は、すぐに歯科医院や口腔外科を受診してください。
早期発見・早期治療が、病気を防ぐ最大の手段です。
舌小帯の異常に気がついたら、遠慮せずに歯科医院へご相談ください。