歯茎から膿が出るのは危険信号?原因・対処法・治療まで徹底解説!
監修:歯科医師 金丸智士

「口の中に変な味がする」「歯茎から黄色いねばねばしたものが出てきた」
そんな異変や違和感が現れたら、たとえ痛みがなくてもそのまま放置するのは危険です。
歯茎から膿が出るのは、口内で何らかの炎症や感染が起きているサインです。
今回は、歯茎から膿が出る原因、膿が出ているときのセルフケアの注意点、そして何より重要な歯科での治療について詳しく解説します。
【目次】
1.【要注意】こんな症状があると歯茎に膿が溜まっているかも?
2.歯茎から膿が出る主な原因
3.自分でできる応急処置とNG行動
3-1一時的に症状を和らげる方法
3-2やってはいけない行動
4.歯科医院で行う治療
5.膿は「自然に治る」ものではありません
【要注意】こんな症状があると歯茎に膿が溜まっているかも?
以下のような症状がある場合、歯茎に膿が溜まっている可能性があります。
○白い膨らみ(瘻孔)ができている
ニキビのようなできものがあり、膿がにじむことがあります。
○歯茎の腫れと赤み
歯茎の腫れの内部に膿が溜まっていると、患部を押したときに痛むことがあります。
○口臭や苦い味がする
膿の臭いが口臭や苦みとなって現れることがあります。
○歯が浮いたような違和感がある
歯茎の中に膿が溜まっていると、歯が押し上げられるように感じることがあります。
○ズキズキする痛み
膿が排出されず歯茎の中に溜まると、激しい痛みが出ることがあります。
痛みや症状の強弱にかかわらず、「膿=細菌感染」のサインです。そのため、早期の対応が必要になります。
歯茎から膿が出る主な原因
1.歯周病の進行
歯周病は歯垢や歯石に含まれる細菌が歯茎に感染して起こります。重度まで進行すると、歯茎から膿が出ることがあります。
2.根尖性歯周炎(歯の根の先の感染)
虫歯が悪化して神経を失った歯(失活歯)に細菌が入り込み、歯の根の先で膿が溜まる病気です。
症状がないまま進行するケースも多く、レントゲンで偶然見つかることもあります。
3.歯根破折
神経を失ったことで脆くなった歯が割れて、その亀裂部分から細菌が侵入して炎症を起こすことがあります。
この場合は、抜歯が必要なケースが多いです。
4.親知らずの炎症(智歯周囲炎)
斜めや横向きに生えた親知らずの周囲には細菌がたまりやすく、炎症を起こして膿が出ることがあります。
同じ場所で炎症を繰り返す場合は抜歯が検討されます。
5.歯茎の傷への感染
硬い歯ブラシや硬い食べ物によって歯茎が傷つき、傷口が感染して膿が出ることがあります。
6.根管治療後の再感染
過去に根管治療(歯の根っこの治療)を行った歯の内部に細菌が残っていると、再び感染して膿が溜まることがあります。
この場合は再治療が必要です。
自分でできる応急処置とNG行動
膿が気になっても、すぐには歯科を受診できなかったり、取り急ぎ違和感を緩和したかったりする場合もあるでしょう。
ここでは、ご自宅でできる応急処置と、やってはいけないNG行動についてお伝えします。
一時的に症状を和らげる方法
○口内の清掃し清潔にする
歯磨きをするときは、患部にそっとブラシを当てて優しくブラッシングしましょう。殺菌作用のある低刺激うがい薬の利用もおすすめです。
○患部を冷やす
頬の外側から冷やすことで腫れや痛みが和らぐことがあります。(氷を直接患部に当てたり、冷やしすぎたりしないようにしてください)
○市販の痛み止め
症状が強い場合は、一時的な対処として痛み止めを服用しましょう。
ただし、薬を飲みたいほどの痛みがあるようなら、必ず歯科受診をしてください。
やってはいけない行動
○膿を無理に押し出す
○舌や指で患部を触る
○長時間の入浴・激しい運動・飲酒(血行が良くなること)
○強い力でごしごしと幹部を磨く
これらの行動は炎症を悪化させ、治癒を遅らせるリスクがありますのでご注意ください。
歯科医院で行う治療
歯科医院では、膿が出ている原因に応じて、以下のような治療が行われます。
○歯周病
歯垢や歯石を専用の器具を使って除去します。歯周病が重度に進行している場合は外科的な処置をすることもあります。
○根尖性歯周炎
根管治療(歯の根の中の洗浄・消毒・密封)を行います。状況に応じて、感染している歯の根の先を外科的に取り除く「歯根端切除」という治療を行う場合もあります。
○歯根破折
歯の根が破折している場合、抜歯が必要なことが多いです。抜歯をしたあとは、ブリッジやインプラントなどの治療を行なって、しっかり噛めるように歯を作っていきます。
○智歯周囲炎
洗浄や抗菌薬によって炎症を抑えます。再発を繰り返している場合は、親知らずの抜歯が推奨されることがあります。
○歯茎の傷の感染
患部の消毒や排膿処置、抗生物質の処方などを行います。
膿は「自然に治る」ものではありません
歯茎に溜まった膿は、体が細菌と戦った“結果”であり、体が出している「SOSサイン」です。
見過ごすと、やがて歯を失ったり、口腔全体や全身に影響を及ぼしたりすることもあります。
「ちょっと気になる」「痛みがない」程度の症状でも、放置せずに歯科医院で相談しましょう。
早期発見・早期治療が、あなたの歯と健康を守ります。